A・ギデンズの「構造化理論」、P・ブルデューの「実践の理論」、R・バスカーの「社会活動の変形モデル」などは、個々の孤立した理論というよりも、構造化論(structurationism)という大きな枠組みに位置づけられ、それは社会学における一つの「学派」として成立する可能性を持っている。構造化論は、社会学における正統派に対抗しうる視点を与えるものであり、本論文では、その意義と可能性について考察した。
第5章では、1960年代後半から大きな課題とされてきた住民参加について、現在その実態がいかにあるのかを調査データを通じて明らかにした。さらに、地域計画にともなう住民の反対運動について言及し、そうした反対運動を生じさせないための実効的な住民参加が、いかなる要件を充たすことによって可能になるのかを考察した。また、地域におけるイベントが、住民参加を進めるための一つの契機になりうることを、実例を示しつつ指摘した。
第7章では、地方自治体において、生活環境はいかなる実態にあるのか、また地域計画において、どのような整備の方向が目指されているのかを、とりわけ地域特性を考慮に入れつつ、調査により得られたデータから明らかにした。さらに、それらがいかなる要因によって規定されているのかを分析し、生活環境の整備に関して、自治体のおかれた問題点について考察した。
近年、社会学の領域において、モダニティ論が盛んに展開されている。かつてのマルクス主義的な資本主義社会分析と、機能主義的な近代化論ないし産業社会論が信用を失い、それらを乗り越えるために、近代社会の制度的次元の多次元性を強調する「モダニティ」という概念が浮上した。そして、一部の論者は、現代社会がモダニティの終焉(ポスト・モダニティ)ではなく、モダニティの徹底化された段階、すなわち新しいモダニティの出現であると主張し、注目を集めている。本論では、A・ギデンズやU・ベックらの「新しいモダニティ」論に依拠しつつ、われわれが現に生きている現代社会の条件について分析し、その問題を指摘し、そうしたモダニティの現実の中で堂生きていくことができるのかについて考察した。
第6章では、現代社会における社会福祉について再考した。福祉国家の破綻が言われる中、これからの社会において福祉はいかにあるべきだろうか、また、人々はどのように望んでいるのか。考察の手がかりとして、人々の公的年金に関する意識について分析した。そして、分析結果を、A・ギデンズの提示した「第三の道」論に結びつけて、考察を加えた。
第11章では、高齢社会における高齢者と仕事の関係について検討し、そのことを手がかりとして、現代社会における労働の意味について考察した。1998年に石川県金沢市と愛知県岡崎氏の住民を対象として実施した意識調査のデータを利用した。日本では高齢者は高い労働意欲を持っており、将来予測される労働者不足に対処するためにも、それを生かすべきである。また、高齢者の「生への関心」から働くということは、あらゆる年齢層にとっても、一つのモデルとなることを指摘した。
東京都の多摩センターの地域住民を対象として意識調査をおこない、ニュータウンにおける地域住民組織のあり方について検討した。とりわけ、旧来からの住民と新規に参入してきた住民が混住する地域に焦点を当て、そこで生じる問題点を、住民の意識から探った。さらに、これらの問題点がいかに克服されるかについて考察した。
現在、国際的にも指導的な理論家の一人と目されるイギリスの社会学者、アンソニー・ギデンズの構造化理論について検討した。構造化理論は、人々の慣習行動的な社会的実践によって社会が再生産されるという過程に注目するものであり、その意義は、「過程」というカテゴリーを復権し、社会というものをより具体的に把握する道を示したことにある、と主張した。しかしながら、構造化理論には、一定の批判を免れない問題点が存在することを指摘し、その解消の道筋を探った。
「構造」の概念は、社会学において、最も中心的でありながらも、論争的で、あいまいである。したがって、社会学により有用な形で定式化することが求められる。そのための準備作業として、本論文では、アンソニー・ギデンズの構造化理論における構造概念を取り上げて検討し、その意義と問題点について考察した。
従来の社会学理論は、時間を欠いた「均衡論」的アプローチをとるがゆえに、深刻な問題を抱えている。アンソニー・ギデンズの構造化理論は、「再生産論」的アプローチを取ることによって、社会学理論に時間を組み込み、そうした問題を克服しようとするものである。本論文では、そのように構造化理論の意義を認めつつ、しかしギデンズの試みは必ずしも成功しているとはいえないとして、その問題点を指摘した。
近年、「時間」が社会学における重要なテーマとして浮上してきている。従来の社会学において、時間や空間は社会の外部的な環境であるかのごとく扱われるのみであった。しかし、時間と空間は社会の外生変数ではなく、社会を構成する内生変数に他ならない。それゆえ、A・ギデンズは社会理論の核心に「時間」と「空間」を組み込むことが必要であると主張している。本稿では、そうしたギデンズの時間-空間論を検討し、その意義と問題点について考察した。
イギリスの科学哲学者R・バスカーの「社会活動の変形モデル」について、A・ギデンズの構造化理論と比較対照しながら、検討を試みた。そして、それによって、これら両者の理論を統合し、構造化論という社会学理論における一つの「学派」として成立させる可能性を探った。
A・ギデンズの構造化理論は、社会学の根本問題とされる構造と行為の虚偽の対立を解消する試みとして評価される。しかし、それは必ずしも成功していないという批判がしばしば見られる。そうした批判を取り上げつつ、構造化理論の問題点について考察した。さらに、P・ブルデューやR・バスカーの仕事を手がかりとして、構造化論をさらに発展させる方向を探究した。
1991年に実施された「社会的公正観に関する調査」の日本におけるデータを利用して、社会全体の所得分配の公正評価の実態を明らかにし、そのような評価がなされる過程の解明を行った。具体的には、人々は所得格差をどのように認知しているのか、どの程度の所得格差を公正なものと考えているのか、現在の所得格差をどのように評価しているのかを明らかにした。さらに、そうした人々の所得格差にかんする認知、理念、評価はいかなる要因によって規定されているのかを、仮説を立て、多変量解析を用いて検証した。
1991年に13カ国で行われた社会的公正観に関する国際比較調査のデータを利用し、日本における税金に関する公正観を解明した。すなわち、現行の税制において重税感を持っているのはいかなる人なのかと問い、それを説明しうる仮説を立て、多変量解析を用いて検証した。仮説として、(1)納税額の多さ、(2)生活水準、(3)税額と生活水準の相互作用、(4)税制度に対する知識、(5)税徴収の公正さ、などを用意した。結果として、「諸個人の生活水準と実際の税負担との相互作用」と「税徴収のあり方の公正さ」が、重税感を高める要因であることを明らかにした。
社会統合とシステム統合という概念的区別は、わが国の社会学会において、それほど重視されてはいない、しかしながら、現代を代表する社会理論家であるA・ギデンズやJ・ハーバーマスが、ともにそれらの概念を組み込んだ形で、その社会理論を構成している。また、かれらのみならず、いく人かの論者は、社会理論を構築する上で、とりわけ変動の問題を取り扱う上で、それらを非常に重要な概念であるとみなしている。そこで、本論においては、この概念の有用性についてあらためて検討した。結論として、ギデンズの概念化が、他と比較しても、きわめて有用であることを明らかにした。
高齢化その他の要因により,社会福祉は行き詰まりをみせ,福祉国家は曲がり角にある。そこで、本稿は、これからのあるべき福祉について考察することを目的とした。その手がかりとして、社会民主主義とネオ・リベラリズムに代わる「第三の道」を提起したギデンズの仕事について検討した。その上で,「第三の道」に対する諸批判も取り上げて考察した。さらに、「第三の道」とコミュニタリアニズムとの関係に焦点を当てて分析を試みた。以上の検討により、「第三の道」の政治の意義と問題点を明らかにした。
石川県松任市(現在,白山市)と輪島市の住民を対象とした意識調査のデータを利用し,人々の公的年金制度に対する意識を分析した.そこから,望ましい年金制度のあり方について検討した.
初期Parsonsの解釈をめぐってAlexanderとCamicとの間でなされた論争を素材として,社会学において「古典」を読むということの意味について検討した.
従来の社会学理論は、時間を欠いた「均衡論」的アプローチをとるがゆえに、深刻な問題を抱えている。アンソニー・ギデンズの構造化理論は、「再生産論」的アプローチを取ることによって、社会学理論に時間を組み込み、そうした問題を克服しようとするものである。本報告では、そのように構造化理論の意義を認めつつも、ギデンズの試みは必ずしも成功しているとはいえないとして、その問題点を指摘した。
1991年に実施された「社会的公正観に関する調査」の日本におけるデータを利用して、社会全体の所得分配の公正評価の実態を明らかにし、そのような評価がなされる過程の解明を行った。具体的には、人々は所得格差をどのように認知しているのか、どの程度の所得格差を公正なものと考えているのか、現在の所得格差をどのように評価しているのかを明らかにした。さらに、そうした人々の所得格差にかんする認知、理念、評価はいかなる要因によって規定されているのかを、仮説を立て、多変量解析を用いて検証した。
本報告では、日本において、人々は所得格差をどのように認知しているのか、どの程度の所得格差を公正なものと考えているのか、現在の所得格差をどのように評価しているのかについて、解明した。とりわけ、クロス表レベルで、個人の地位属性による公正観の違いを明らかにし、そうした違いが生み出される要因について考察した。すなわち、理念、評価はいかなる要因によって規定されているのか、である。
自治体が地域計画を推し進めるにあたって、しばしば住民の反対運動が生じる。それは、地域計画に、住民の意向が必ずしも十分に反映されていないからである。したがって、住民参加について、あらためて考えなければならない。報告では、住民参加の実態がいかにあるのかを調査データを通じて明らかにし、さらに、住民参加を実効的なものとするためには、いかなる要件を充たすべきかについて考察した。
近年、社会構築主義的な考え方が登場し、それへの支持が急速に拡大している。しかし、あらゆる知識が構築されたものだとしたら、普遍的に妥当な社会科学的知識は存在することができるのだろうか。甚だ疑問である。本報告では、ポスト実証主義・ポスト経験主義として、一つの有力な立場たりうると考える、超越論的実在論について検討した。そして、超越論的実在論を採用したとき、いかなる社会理論が形成されることになるのか、について考察した。
1998年11月に、愛知県岡崎市と石川県金沢市の40歳以上80歳未満の住民を対象として実施した、郵送法による意識調査のデータを利用して、人々の公的年金に関する意識について分析した。すなわち、現行の制度において、公的年金の負担に関して不満を持っているのはどのような人か、公正でないと感じているのはどのような人であるのか、を明らかにした。
本報告では,Anthony Giddensの構造化理論を取り上げ,それにおける理論と経験的調査研究の関係を検討することによって,社会学の一般理論の意義について考察した.構造化理論は,何かに直接適用して現象を説明するものではない.つまり,説明的一般化から成り立つ理論ではない.構造化理論は経験的調査研究にあたって「感受性を高める装置」として機能するものであり,そうしたものとして一般理論の意義は現在においてもまったく失われないていないことを主張した.
地域計画において、生活環境整備は、もっとも重要な位置づけを与えられている。本論文では、交通、下水道、住宅、保育所を取り上げ、生活環境はいかなる実態にあるのか、また地域計画において、どのような整備の方向が目指されているのかについて、調査により得られたデータから明らかにした。
1991年に13カ国で行われた社会的公正観に関する国際比較調査のデータを利用し、アメリカ、イギリス、オランダ、旧西ドイツ、日本という資本主義5カ国における所得格差の公正観を解明した。すなわち、社会全体の所得分配の公正評価の実態を明らかにし、そのような評価がなされる過程について、仮説を立て、多変量解析を用いて検証した。
本稿では、人々の公的年金に関する意識について分析した。すなわち、現行の制度において、公的年金の負担に関して不満を持っているのはどのような人か、公平でないと感じているのはどのような人であるのかを解明した。1998年に実施した意識調査のデータを分析した結果、以下のことが明らかになった。第1に、多くの人々が自分が受け取るだろう年金給付額を実際以上に低く見積もっている。第2に、情勢で、より高齢で、世帯所得が低い人ほど、自分が給付されると予想するよりも多くの給付額を望んでいる。第3に、中年層で、負担が重いと強く感じている。
本稿では、高齢社会における高齢者と仕事の関係について考察した。1998年に石川県金沢市と愛知県岡崎氏の住民を対象として実施した意識調査のデータの分析を中心に、高齢者にとっての仕事の意味について考察した。結果として、(1)多くの人々は60歳を超えてもなお働くことを望んでいる、(2)男性ほど、「働ける限り働きたい」と望んでいる、(3)高年齢になるほど、「仕事を続けたい」と望んでいる、(4)男性ほど、「働くことは生きがい」という意見を持っていた、(5)高年齢者ほど、「働くことは生きがい」という労働観を持っていた、ということが明らかになった。
高齢化その他の要因により、福祉は行き詰まりをみせ、福祉国家は曲がり角にある。そこで、本稿では、これからのあるべき福祉について考察することを目的とした。その手がかりとして、社会民主主義とネオ・リベラリズムに代わる「第三の道」を提起したA・ギデンズの仕事について検討し、その意義と問題点を明らかにし、その可能性について考察した。
新たな社会福祉のあり方を提起した「第三の道」を採用した国であること、そして大都市であることという二つの観点から、ニューヨーク州を研究対象として、そこにおける高齢者福祉サービスのあり方について明らかにした。ニューヨーク州では、ベビーブーム世代が高齢期を迎えるため、2015年までに高齢者が急増する。このことを見越して、ニューヨーク州高齢化対策室では、『プロジェクト2015』という高齢者対策について分析した報告書を作成した。本稿では、これを中心に検討した。
金沢大学社会学研究室が金沢市との共同研究として実施した二つの調査,「金沢市町会実態調査」と「市民のコミュニティに関する意識・行動調査」について,調査対象者や対象数,調査方法など,その概要について記述した.
金沢市における町会の活動実態や町会長の町会活動に対する意識を分析することによって,町会を活性化するための条件について考察した.
金沢市における町会の会長について,その属性や意識につい分析し,町内会長がどのような人々であり,町内会や地域コミュニティについて,どのように考えているのかを明らかにした.
金沢大学文学部人間学科1年生に学問の作法を修得させる目的で作られた「行動科学序論」という授業のためのテキストに,社会学の文献案内を書きました.社会学の主要な分野ごとに5冊前後を選んで紹介しています.