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2006年11月20日

●2007年コム・デ・ギャルソンの春夏パリ・コレクション

2007年春夏のパリコレで,川久保玲さんは日の丸をモチーフにした作品を発表したそうだ.ものをみていないからなんともいえないが,日本のナショナリズムが云々されるこの時期に,日の丸を取り上げて,ヨーロッパの地において発表するのは,ファッション・デザイナーとして実に鋭いと思う.

 日の丸は美しいか? 10月に開かれた07年春夏パリ・コレクションで、コムデギャルソン(川久保玲)が日本の国旗をモチーフにした新作を発表し、少なからぬ反響を巻き起こした。大きな反発や非難はなかったが、会場で感じられた戸惑いやあいまいさに、日の丸や日本への視線が透けて見えた。
日の丸をプリントした白地のジャケット=10月2日、パリで(撮影・大原広和氏)

 コムデギャルソンのショーでは、赤い太陽がほぼすべての服に登場した。Tシャツにプリントされ、続いてジャケットやスカートの大きな模様になり、「白地に赤」は抽象的なストライプとしても使われた。

 デザインの主題は紛れもなく「日の丸」だった。ショーの音楽や演出はことさら日本を強調するものではなかったが、観客席には互いの反応を探り合うような、緊張感が走った。

 ショー後の舞台裏で、川久保氏は「主題はキュービスム」、日の丸は「究極のシンプルな美しいデザインなので」と語った。服の形と日の丸を解体して新たに構成したとの趣旨だった。

 しかし解体・再構築についていえば、川久保氏は従来もっと冒険的で精巧に積み重ねてきた。立体を平面上で表現するキュービスムも、もともと立体である服にはあまりそぐわない。

 言外に意図したのは、日の丸イメージの再構築だったのではないか。日の丸を抱いた服は、赤と白、強さとフェミニンなしなやかさ、攻撃性ともろさ、といった対比に富んでいた。

 海外のメディアでは、フィガロ紙は「日本はキレる? 伝統に亀裂が? 川久保はそう言っているように見える」。スタイル・ドット・コムは「安倍晋三が新首相に選ばれ日本が微妙な転換期にある今、あの赤い丸に注目せざるを得ない」として、「彼女は自身が思う純粋な日本の美をあえて表明した」と評した。

 だが、こうした明快な言い方は例外的。ヘラルド・トリビューンの「川久保の反逆的な直感」など、日の丸については踏み込みを避けた論評が多かった。

 中国や韓国の観客は会場にほとんどいなかった。ベトナム人デザイナーは「彼らが冷静に受け止めるかどうか疑問だね」と語った。

 川久保氏にも日の丸使用へのためらいはあったという。造形としての美しさに「送り手も受け手も素直になれない」、すっきりとしない、あいまいな状況へのいら立ちを、帰国後、示した。そして「国にも何とかしてもらわないと」と。

 ショーでは、出来損ないの日本髪のようなヘアや下手な白塗りメークなど、近代日本の西欧化のちぐはぐさを揶揄(やゆ)するような毒もはらんでいた。だが、服全体は極めて美しかった。

 「色々ありましたけれども……」。今回の新作は、批評性を保ちつつも日の丸に象徴された近・現代日本を何とか引き受けようとする試みだったようだ。

 この姿勢は、日の丸や日本の美しさを安易に語ることへの警鐘でもある。しかし最も挑戦したかったのは、批判も肯定もしにくい状況だったように思える。

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